38歳女性。会社員。
主訴)左肘が完全屈曲・伸展ができなくなった。左手首が痛い。
原因)昨日、スケートをしていて後ろに手をついて転んだ。
症状)左肘の三頭筋付着部・腕橈骨筋周辺に痛み+
手首の回外時に手首の痛み++
肘周辺になんとなく腫れ+
圧痛ー
あなたの診断は?
この患者さん、来院時痛みを訴えていませんでした。
訴えていたのは「肘が曲がらないし、伸ばせないのです」でした。
しかし発生機序を伺った段階である程度の目星はつけられました。
それは・・
「後ろ向きに手をついて転んだ」
です。
手をついて転んだ場合、まず疑うのはコーレス。次に橈骨頭・舟状骨骨折です。これは絶対です。まず確認してくださいね。
そして今回は「後ろ向きに。」
という条件が付け加えられていたので、まずは橈骨頭骨折を疑わなくてはなりません。
理由は力のかかり方(体重の乗り方)です。
コーレスは橈骨遠位端骨折です。今回の後ろ向きに手をついた姿勢を自分で再現してみてください。
橈骨側に体重は乗らないと思います。(尺骨側に体重が乗ると思います)つまり舟状骨にも体重は乗りにくいのです。
どこに最も体重がかかるかというと、体の外側に体重が乗ります。
ですから橈骨頭骨折を疑うのです。
そして、ここの圧痛を調べました。ですが、今回の患者さんは圧痛がありません。そこで、手をついて体重をかけてもらいました。こうすると橈骨頭のところが痛くなるか、圧痛が出現することが多いのです。ですが、今回は肘を伸ばせないのでうまく体重を乗せることができず、痛みを訴えません。
次に、回外動作をしてもらいました。橈骨頭の骨折があれば回外ができないか、痛みを訴えます。回外動作は嫌がりました。ですが痛みは手首にありました。
ここまでの所見を整理すると、明らかな圧痛はありません。肘の腫れと、あとは肘の可動域制限と、回外動作での手首の痛みくらいです。
あなたはどう思いますか?
診断がつきましたか?
この先は・・
感覚です。
すみません。。
当てずっぽうではなく、経験に基づいた感覚です。
私は折れていると思いました。
レントゲン結果 ↓
この写真では分かりにくいですが橈骨頭の頚部が短縮転位しています。
やはり折れていました。
あえて文字にすると
「肘の屈伸制限は、筋肉の挫滅でもたまに遭遇します。ですが、どこにもぶつけていないので筋肉の挫滅は考えにくい。ということは関節に障害が起こっている。そして回外制限あり。橈骨頭だなぁ。」
という感じです。
わかりにくいですかねぇ。。
肘は拘縮が早いのでシーネを外す時期が最も頭を悩ませます。とりあえずは、肘屈曲位での上腕骨中央から手首までのシーネ固定と三角巾で終了しました。