53歳女性。主婦。
主訴)右第3指PIP関節が痛い。
原因)2ヶ月前に手をついて転んだ。その後1ヶ月しても痛みが治まらないので近くの整形外科に行ったが、捻挫の診断。そしてさらに1ヶ月しても痛みが治まらないので来院。
症状)PIP関節に腫れ++(シワが少ない)
圧痛ほぼなし
屈曲90度制限
あなたの診断は?
一度他院を受診して「捻挫の診断を受けている」とのことですが、なるべく先入観を除いてフラットな状態で診察するようにしてください。
2ヶ月してもこの腫れの状況だと骨折があったのかなぁという感じ。明らかな圧痛がないので、CRPSになっているんだろうなぁという感じ。
レントゲン写真 ↓
ちょっと分かりにくいですが、中節骨底が剥離骨折しています。
やはり骨折していたのを放っておいて腫れとROM制限が残ってしまっている状況でした。
正直、こういうのが一番厄介です。いつ頃この腫れとROM制限が良くなるのかがまったく読めないからです。
受傷直後に来院していれば、2週間くらい固定して全治3〜4週間。などの予定が分かるのですが、CRPSに移行しているような場合は先が読めません。
また、今後の治療に関しても固定が必要か?期間は?運動療法の開始時期は?などがその人によってだいぶ差があるので経過観察が必須です。
つまり、CRPSになるとセオリーが通用しなくなってしまうのです。
骨折などの外傷は、受傷直後の処置が最も大切です。この時期の治療をいかに大切にするかで予後が大きく変わってきます。その辺のことは全ての患者さんにお伝えするようにしてください。
とりあえず今回は、軽めの固定(コーバン)と痛みが出ない程度の本当に軽めの運動療法をして、痛みが出るほどの屈曲は絶対にしないように指導しました。
今回は2週間くらい軽めの固定を続けて腫れは引いていました。それ以外のことは何もしませんでした。
安静の大切さを痛感した症例でした。
ただCRPSは人それぞれです。今回は2週間でだいぶ改善しましたが数ヶ月かかることもよくありますので。まずはCRPSにさせないように治療を進めるようにしてください。